引き取られた

もう犬が人を襲う事が無くなったのじゃ。それまでは恐ろしいとされていた犬も段々と可愛がられるようになっての。ペットとして飼わ れるようになったんじゃ。

ただ、代替わりした大奥には居づらくての、ワシも大奥から、ある米問屋に引き取られたんじゃ。 その頃は世の中単純での。頑張るとか精を出すとかいうことも大店の奉公人くらいしかなかったのう。
なんせ独り者なら月に六日、カーシェア レンタカー七日も働けば生きて いけたのじゃ。妻子持ちでも十四日くらいじゃ。仕事を見つけるの簡単じゃった。みーんな、今で言うフリーターみたいなものでの。
親方のところに行けばすぐ に雇ってくれたのじゃよ。ワシが居た米問屋でも人足が足りぬ時はそこらの町民をその場で雇って、礼金を払って米俵を積み下ろしさせたものじゃよ。
ただそれも黒船までじゃった。維新に富国強兵、日清、日露、大東亜と動乱の時代が続いての。その頃には一所懸命という鎌倉武士の言葉が庶民にまで 伝わり、それが一生懸命へと変わって、一般庶民にまで強制される世になってしもうた。全く以て嘆かわしいことじゃよ。身分があった頃の方がよほど自由 じゃった。


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